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「セルフ鉄拳」

 「うひょひょ〜い。」

 調子いいよ。アレンジ、バンバン進んでるよ。今日も10時間ぶっ続けで作業してるよ。めっちゃグルーヴしてきたよ。ついついモニター・スピーカーのレベル、上げ過ぎちゃうよ。僕、のりのりよ〜。

 どのくらい進んだか、昨日UPした写真とよーく見比べてみて。

 それじゃ〜、ほれっ!

 「イヤッシー」が右に移動したのは、別に意味はないから。

 ねっ、パートめっちゃ増えてるし、曲のサイズも長くなったでしょ。つうことは、構成も決まって来たってこと。

 それに、色もキレイキレイになって来たし。(でも、データのカラーリングとアレンジはあまり関係ありません。趣味と美的センスの問題です。あしからず。)

 これでなんとか、吉田さんにプレゼン出来そう。うひょ。

★ ★ ★

 これからブログルことは、あくまでも、僕個人の考えで、けっして他の人にも同じように感じてほしいという意味では有りません。はい。

 それは、9年前にニューヨークに引っ越しした時のこと。

 拠ん所ない事情で日程が取れなかったので、内装工事でホコリやらペンキやら瓦礫やらでグチャグチャのアパートに、やむを得ず住み始めた。

 朝早くから引っ切りなしに工事の人が出入りする中、ロシアから来たという人が気にかかった。

 最初に顔を出した頭領の話によると、ニューヨークに昨日着いたばかりだと言うのだ。

 昨日着いて今日一人で仕事してるという事実に、僕は、かなり驚いた。

 そんな彼に比べて、この僕はといえばもう大騒ぎて、電話屋さんが一日待っても来ないとか、エレベーターが動かないとか、機材が揃わないと仕事なんて出来ないとか、スタッフに当たり散らしているだけだった。

 『なのに、この人は、もう働いてる。』

 僕は、それとなく会話を始めた。

 「どうだい、ニューヨークに着いたばかりで不安だろ?治安も良くないし、危険もいっぱいだし。アグレッシヴなヤツが多いし。」

 すると、彼から、さらに驚く答えが返って来た。

 「いいや、ニューヨークは信じられないくらい安全さ!昨日の夜も、久しぶりに、ぐっすり寝れたし。」
 「えっ!?」
 「いやー、実はね、おとといまで、或る内戦の国で、機関銃射って戦争やってたんだ。オレ、プロの兵士なんだよ。でも、そろそろ年齢も年齢だし、新しい仕事に就こうと思ってニューヨークに来たんだよ。子供もまだ小さいからな。まだまだ頑張らないと。」
 「えっ!?」

 僕はあまりのショックに、埃よけのビニールシートを被せたままのソファーにヘナヘナと座り込んでしまった。

 そして、一瞬のうちに僕の頭の中は、今この瞬間も世界中で戦争している兵士達や、炎天下で食べ物もなく飢えている子供達や、生きることさえままならぬ人達のことで、溢れかえってしまった。

 『僕は、なんて、恵まれているんだ。そして、今までの所、なんて幸運だったんだ。』

 おそらく、もう二度と会うことも無いであろう彼と交わした言葉は、それ以来、僕が甘えたことを言っていると、「鉄拳」となってパンチを食らわしてくれる。

 そして、一瞬で、目を覚まさせてくれる。

 「よっしゃぁー!」

 そんなわけで、僕は今日も頑張って、仕事するのだ。