3年ぶりとなるオリジナルアルバム「THE DREAM QUEST」を携えて行われたツアー、
DREAMS COME TRUE CONCERT TOUR 2017/2018 -THE DREAM QUEST- が待望のBlu-ray & DVD化!
ライヴを観て、驚いた。
前半のワンダーランド、ウラワン的な選曲から、NYでの映像ドキュメンタリーを挟んでの後半はなんと、ニューアルバム『THE DREAM QUEST』を収録曲順通りに演奏したのだから。しかも最初のMCでライヴの構成を種明かしするサービス精神と自信に震えた。
アルバムを聴き込んできたオーディエンスであれば、当然曲順は体に染み込んでいるわけで、つまり、次に何をやるか、最後は何の曲かがわかってしまうわけだ。それでもなお、ワクワクさせてしまうハイレベルな演奏と緻密な演出は、アルバムの曲順通りだったがゆえに、そこを感じる余白がオーディエンスのなかに生まれ、より深く濃い音楽体験の場になったのではないかと思う。
映像作品を観て、さらに驚かされた。
ドリカムのライヴといえばセンターステージ、というのはご存知の通り。今回もセンターステージの新たな可能性をしっかりと模索しているわけだが、会場で観ていた感覚よりも、映像の方がより立体的になってアルバムの世界観が伝わって来る。あれ、うちのテレビ3Dだったっけ? と思わず勘違いしてしまうほど。昨今、インスタグラムに代表されるように、体験のビジュアル化というものが一般的になった今、ドリカムのライヴは、ビジュアルエンタテイメントの最高峰だと体感できる。
先ほど、ライヴの構成が前半と後半でわかりやすく分かれているという話をしたが、それは曲の構成だけではなく、見た目にもまったく違う世界が現れる。滑走路のような長いセンターステージの天井が、後半に入ると下がってきてその上にもう一つ空中ステージとでも言うべきものが登場する。それはまさにアルバムのジャケットで描かれていた神殿であり、上下左右トータル12面体から成るステージは圧巻だ。
もちろん、ライヴを観ていた時もステージの構造は理解できたし、十分ビビリもした。しかし、自分の席の向う正面(裏側)はどうしても実際には観られないわけで、ライヴ中にそこのストレスがなかったとはいえ、気にはなっていた。アルバムの曲順通りに進行していきながら、1曲1曲が違うエリア、演出で行われるため、座席の位置によってかなり見え方が異なったはずだ。それが映像作品では、複数のカメラが捉えた映像をベストな角度で見られるわけだから、まったく新鮮な気持ちでライヴを楽しめた。テレビの前で。
ライヴの映像作品というと、どうしてもアルバムやツアーの付属物といったイメージが強い。ライヴエンタテインメントの重要性がますます叫ばれる昨今にあって、音響や照明、ステージ機構などの技術革新はものすごいスピードで進んでいるが、こと映像作品のオリジナリティに関してはどうだろうか。おまけ映像とかそうしたことでお茶を濁している、とまでは言わないが、必ずしも有効な手を見いだせていないのが現状ではないだろうか。
そこで、このドリカムの『THE DREAM QUEST』TOURの映像作品である。ライヴに来た人を思いっきり満足させながら、それでもまだ未踏の地が残されていて、映像作品でようやく完結されるという表現をまたいでつながる壮大なストーリーは、映像パッケージにおける新たな可能性を示しているのではないだろうか。そうやって考えると、リリースしたばかりのニューアルバムを曲順通りにやるという決断の意味が、この映像作品を見てようやくはっきりと理解できるのだ。
彼らの描き出した物語の完結編にあたる映像作品を見ずして、『THE DREAM QUEST』は語れない。
文:谷岡正浩
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