



1st AlbumDREAMS COME TRUE
1989年3月21日
2nd AlbumLOVE GOES ON…
1989年11月22日
3rd AlbumWONDER3
1990年11月1日
4th AlbumMILLION KISSES
1991年11月15日
5th AlbumThe Swinging Star
1992年11月14日
6th AlbumMAGIC
1993年12月4日
7th AlbumDELICIOUS
1995年3月25日
8th AlbumLOVE UNLIMITED∞
1996年4月1日
9th AlbumSING OR DIE
1997年11月15日
10th Albumthe Monster
1999年4月21日
11th Albummonkey girl odyssey
2001年12月5日
12th AlbumDIAMOND15
2004年12月8日
13th AlbumTHE LOVE ROCKS
2006年2月22日
14th AlbumAND I LOVE YOU
2007年12月12日
15th AlbumDO YOU DREAMS COME TRUE?
2009年3月21日
16th AlbumLOVE CENTRAL
2010年11月30日
17th AlbumATTACK25
2014年8月20日
文:栗本斉(1st~8th)大谷隆之(9th~17th)

1st Album
DREAMS COME TRUE

1989年3月21日発表
328H-5071
Epic Records Japan
1988年に活動を開始したドリカム。満を持してレコーディングを行ない、その翌年に発表されたのが、このグループ名をそのまま冠した記念すべきデビューアルバム。初作品ならではの初々しさを感じられると同時に、彼らのソウルフルながらもポップな音楽性が既に完成されていることに、あらためて驚かされるだろう。それは、同時リリースとなったファーストシングル「あなたに会いたくて」を聴けば納得。マイナーコードで和洋折衷感が絶妙なメロディと、エレクトロファンクとでもいうべきサウンドの融合が見事だ。また、アーチー・ベル&ザ・ドレルズ「タイトゥン・アップ」のリズムをUK 風にアップデートしたセカンドシングル曲「APPROACH」、スウィング・アウト・シスターのようなゴージャスな雰囲気をたたえた「週に1度の恋人」、分厚いコーラスとソリッドなリズムセクションの対比が面白い「IT'S TOO LATE」、ヴォーカル力を美しくもせつないバラード「悲しいKiss」など聴きどころは多い。収録曲は1曲を除いて吉田美和が詞曲両方を担当。しかも、その大半がアマチュア時代に書きためていたという。中村正人によるブラックコンテンポラリーの空気を詰め込んだプログラミングもかなり練り込まれており、マイク・ピラを共同プロデューサーに迎えてロンドン録音していることも、功を奏していると言えるだろう。
2nd Album
LOVE GOES ON…

1989年11月22日発表
ESCB-1018
Epic Records Japan
ロンドンで撮影されたアルバムジャケット。このスタイリッシュな雰囲気が成功要因になったかはともかく、2作目にしてブレイクへのきっかけとなったアルバムであることには間違いない。前作から引き続き、その後も重要なパートナーとなるマイク・ピラが共同プロデューサーとしてクレジットされている。大きく変わった点を挙げるとなると、バックの演奏における生音の比重が多くなったことだろう。プログラミングの特色はそのままに、グルーヴ感を重視したサウンドは、コンサートツアーを意識した変化だったのではないだろうか。UK のアシッドジャズを思わせるサウンドがスタイリッシュな「うれしい!たのしい!大好き!」のアルバムヴァージョンに始まり、吉田がアマチュア時代から歌っているという軽快なシャッフルナンバー「うれしはずかし朝帰り」、タイトなリズムとクールな空気感が見事な「LAT.43°N ~forty-three degrees north latitude~」、サウンドだけだと洋楽にしか聴こえないヘヴィファンク「LOVE GOES ON…」など、今なお人気のナンバーが満載。しかし、極め付けは何とい言っても7分を超える大作「未来予想図 II」だろう。ドラマティックに盛り上がるストーリー性の高いバラードは、シングルヒットでないのにも関わらず多くのカヴァーヴァージョンを生み出した。こういった名曲が揃ったということもあって、本作は長い時間をかけてミリオンセラーに到達する。
3rd Album
WONDER3

1990年11月1日発表
ESCB-1104
Epic Records Japan
'90年に突入すると、彼らに大きな転機が訪れる。それは、2月に発売された5枚目のシングル「笑顔の行方」が、テレビドラマ『卒業』の主題歌に抜擢されたことだ。オリコンチャートで2位を記録し、年間でも14位という大躍進。そのこともあって11月にリリースされたこのサードアルバムは、念願の1位を獲得。一気にミリオンセラーを達成した。そして、その勢いは年末の紅白歌合戦出場で1つのピークを記録するのだ。本作を聴いてみると、当時の勢いがそのまま封じ込められたような感覚にさせられる。中村のランニング・ベースが突っ走る「戦いの火蓋」に始まり、マイナーコードのメロディ展開に吉田お得意のせつない歌詩が絡み合う「さよならを待ってる」、ゴキゲンに跳ねるビートに乗せてキュートなストーリーを展開する「Ring! Ring! Ring! (S・H・H VERSION)」など、これまでのドリカムらしさをさらにブラッシュアップしたという印象が強い。ただし、マンネリに陥るそぶりは一切なく、新機軸も見せてくれる。例えば、サルサのリズムを敢えて硬質に再構築したサウンドがユニークな「KUWABARA KUWABARA」や、ザップあたりの80'sファンクのエッセンスをうまくドリカムらしさと融合した「かくされた狂気」などに、彼らの懐の深さを感じる。そして、「今度は虹を見に行こう」や「2人のDIFFERENCE」といったバラードによって、勢いだけでなく奥行きのある作品になっているのもさすが。
4th Album
MILLION KISSES

1991年11月15日発表
ESCB-1250
Epic Records Japan
前年の大ブレイクを受けて、初のアリーナツアー"史上最強の移動遊園地 DREAMS COMETRUE WONDERLAND '91"を大成功に収めたドリカム。ほぼ1年というスパンでリリースされた4作目は、前作を買ってくれた100万人への感謝の気持ちを込めてタイトルを付けたというのが彼ららしい。先行シングルとして発表され、FUJIFILM のCMタイアップで大量露出によって大ヒットを記録した「Eyes to me」は、別ヴァージョンが収められている。ほかにも、同じくCM に使用されたアップテンポの「彼は友達 (“What a fabulous” VERSION)」、スウィングするリズムがどことなくトロピカルな「愛しのハピィデイズ」、パート2よりも先に作られていたという名バラードナンバー「未来予想図」、ソウルフルでドラマチックな吉田のヴォーカルを堪能できるシングルカット曲「忘れないで」など、これまで以上にカラフルでアグレッシヴな印象が強い。また新たな試みも果敢に行なっており、フェアグランド・アトラクションを思わせるフォーキーでグルーヴィーな「あなたにサラダ」や、ジャジーなサックスとパーカッションがしっとりとサポートする「4月の雨」などは、これまでになかったタイプの楽曲と言えるだろう。ゴスペルタッチの壮大なコーラスに圧倒されるラストナンバー「銀河への船」が終わる頃には、当時のドリカムが1つ上のステージに駆け上った作品だと、あらためて感じられるに違いない。
5th Album
The Swinging Star

1992年11月14日発表
ESCB-1350
Epic Records Japan
'92年は、ドリカムにとって最も忙しい1年だったのではないだろうか。11枚目を数える両A 面シングル「決戦は金曜日/太陽が見てる」は彼らにとって初のミリオンヒットシングルとなった。続くモータウン風のリズムとめくるめく転調が印象的なポップチューン「晴れたらいいね」はNHK 連続ドラマ小説『ひらり』の主題歌となり、地域や世代を超えてさらに支持を得ることになる。当然、その後に発表された5枚目のアルバムは300万枚を超えるセールスを記録した。本作は、ビッグバンドジャズ風のイントロダクションに始まり、スペイシーなサウンドとクリアなヴォーカルが爽快に響く「あの夏の花火」で一気に彼らの世界に持って行かれる。アルバムタイトルにも象徴されるように、スウィングするリズムを用いた楽曲の心地良さは絶品だ。「DA DIDDLY DEET DEE」や「行きたいのは MOUNTAIN MOUNTAIN」などにおけるグルーヴこそ、本作の魅力と言ってもいいかもしれない。とりわけ、オールドタイミーなサウンドでもしっかりと自身の個性を押し出せる吉田のヴォーカルセンスは見事、一方でレイジーなギターソロから始まるパーカッシヴな「SAYONARA (Extended Version)」や、ヒップホップのスクラッチ音を取り入れたクールなサウンドが耳に残る「涙とたたかってる」といった冒険も行なっており、振り幅は相変わらず大きい。彼らの作品中、最もきらびやかなアルバムでもある。
6th Album
MAGIC

1993年12月4日発表
ESCB-1450
Epic Records Japan
'93年も相変わらず快進撃が続いたドリカムだが、メガセールスとなった前作の後に制作された6作目は、売上の勢いはそのままながら大人っぽい内容というイメージなのが興味深い。シングルヒットは先行リリースされた「go for it!」のみであり、吉田本人が出演した資生堂のCMタイアップであったが、ミディアムテンポで歌い方も少し控えめという印象だ。このゆったりとしたグルーヴ感は他の楽曲でも感じられる。爽健美茶のCMソングに使用され、ハープの響きと3拍子のリズムが新鮮な「a little waltz」、ブリティッシュポップやソフトロックからの影響が色濃いアレンジの「いろんな気持ち」、ギロのリズムに乗せてノスタルジックな雰囲気を醸し出す「雨の終わる場所」などは、これまでの元気印とはひと味違う印象を受ける。特筆したいのは、フラメンコ界で現在もっとも人気が高いといわれるスペインのビセンテ・アミーゴが全面バックアップした「愛してる 愛してた」だろう。ドリカムの専売特許だったプログラミングを一切使わないアコースティックな質感はこれまでにないものだ。また、ラストを飾る「HAPPY HAPPY BIRTHDAY」もコーラスと手拍子のみのいわゆるアカペラ作品。こういう楽曲やアレンジをさらりと入れ込めるようになったのは、彼らの音楽性がさらに豊かになった証拠。いわば、ここからドリカムの新しいスタイルが始まったといっても過言ではないだろう。
7th Album
DELICIOUS

1995年3月25日発表
ESCB-1550
Epic Records Japan
およそ1年4カ月ぶりとなった7作目のアルバム。変わらず300万枚を超える売上を記録し、J-POPにおけるトップグループとして不動の地位を築き上げている。前年には「雪のクリスマス」の英語ヴァージョンである「WINTER SONG」をシングルのみでリリース。映画『めぐり逢えたら』(主演:トム・ハンクス)のオープニングテーマに抜擢され、いよいよ海外進出への足がかりを固めていく。本作の冒頭を飾る「いつもいつでも~WHEREVER YOU ARE “DELICIOUS” VERSION~」も、中村のルーツとも言えるアース・ウィンド&ファイアーのモーリス・ホワイトを迎えて発表した「WHEREVER YOU ARE」の日本語ヴァージョン。こういったこともあって、どことなくマニアックな雰囲気を醸し出しているのが特徴だ。「たかが恋や愛」や「IT'S SO DELICIOUS」といったソウルやファンク色の強いナンバーの充実ぶりもその1つ。加えて、メキシカンテイストのかけ声で思わず楽しくなってしまう「TORIDGE & LISBAH」や、ハーモニカを大々的にフィーチャーした「琥珀の月」といった異色曲も充実。ここ数作のアルバムでは吉田と中村の両者が作曲者として二分していたが、今作ではほぼ全曲において中村が作曲に関わっているのも、これまでのアルバムとはメロディのニュアンスが違うところだ。とは言え「す き ~ALBUM VERSION~」や「サンキュ.」といった人気曲も収められていることで、絶妙なバランスを保っているため、評価が高い一枚である。
8th Album
LOVE UNLIMITED∞

1996年4月1日発表
ESZB-1
Epic Records Japan
ドリカムの代表曲というと人それぞれ違うだろうが、セールスと知名度で言えば「LOVE LOVE LOVE」ではないだろうか。大ヒットドラマ『愛していると言ってくれ』の主題歌として広まったが、イリアン・パイプスやチェンバロを取り入れたアレンジはかなり実験的で、ビートルズを始めとするブリティッシュロックへのオマージュのような作品になっているのが興味深い。この曲に象徴されるように、8作目のアルバムは、彼らの好奇心を突き詰めたような新しいサウンドが満載だ。例えば、お得意のファンクナンバーも「SWEET REVENGE」のように、ポップさは控えめでディープな世界観を作り上げている。キャッチーなナンバーも、映画主題歌「7月7日、晴れ」のようにオーケストレーションを大々的に挿入するなど、アレンジのスケールが壮大。また、レゲエのリズムとスパニッシュギターがミックスされた「どうやって忘れよう?」にいたっては、吉田の歌い方さえもこれまでと雰囲気が違う。そして先行シングルとなった「嵐が来る」や「ROMANCE」のアルバムヴァージョンも、当時のR&B やヒップホップを意識した洋楽的なテイストを感じさせられる。この同時代性のようなものは、あきらかに外に向けられた意識。そして、アルバムタイトル通り無限大の可能性を求めた彼らは、ついにデビュー当時から所属していたエピックソニーを離れ、米国のヴァージンレコードと契約することになるのだ。
9th Album
SING OR DIE

1997年11月15日発表
UPCY-6902
Universal Music
歌うか、さもなくば死か──。これ以上ないほど強い覚悟がタイトルからも伝わってくる。1997年、彼らは古巣のエピックソニーを離れて新たにVirgin Records Americaと契約。本格的な世界進出を見据えて作られたのが、通算9枚目となる本作『SING OR DIE』だ。次のステージに対する緊張感と意欲が全編にみなぎったアルバムだが、今聴き直してみると、そこには不思議なくらい気負いは感じられない。派手なアレンジよりじっくり作り込んだ曲調が目立ち、サウンドそのものの精度と強度が上がった印象。海外に向けて自分たちの音楽性を変えるのではなく、むしろドリカムらしさをさらに純化させようという意志が、どの楽曲にも色濃く滲んでいる。吉田美和の心臓の音をコラージュしたオープニングテーマからいきなりスローなバラード「愛するこころ」へ続く冒頭部は、その最たるものだろう。このように大地にしっかり立ち、未来を受け止める静かな闘志こそ、本作を貫く主調音だと言っていい。ゲストミュージシャンとしては、名ギタリストのデイヴィッド・T.ウォーカーが全面参加。R&B テイストのミディアムナンバー「MARRY ME?」のギタープレイは、吉田美和のヴォーカルと甘く絡み合うようで絶品だ。また「よろこびのうた」では、ユッスー・ンドゥールとも共演。アフリカ音楽のリズムを巧みに採り入れつつ、躍動感にあふれた“生命賛歌”を聴かせてくれる。
10th Album
the Monster

1999年4月21日発表
UPCY-6903
Universal Music
1998年7月、前作『SING OR DIE』を英語で録り直したワールドワイドバージョンをアメリカで発売。全米6都市を回るツアーを行なったドリカム。国内と海外を頻繁に行き来する中、東京、ニューヨーク、ロンドン、バハマなどさまざまな場所でレコーディングされたのが、通算10枚目の本作だ。特徴は何と言ってもリズムの多彩さ! 特徴的なヴォーカルフレージングを前面に押し出す作りは不変だが、このアルバムでは歌とビートの絡みがより強調されている。オープニングテーマでは、NYを代表するパーカッショニストのラルフ・マクドナルドがジャングル系のブレイクビーツと激突。続く「なんて恋したんだろ」ではループ系打ち込みビート、3曲目「みつばち」では複雑に交差するドラミングに乗せて、存在感ある歌が聞こえる。その表情は色とりどりで、緩急も自在。1曲ごとに変わるリズムを心から楽しんでいるようだ。電子音が飛びかう「go on, baby!」、ドラムンベースを採り入れた「東京ATLAS」、デジタルジャズを先取りする「夢で逢ってるから」など新機軸も多数。ファンキーな演奏とスキャットが火花を散らす「FUNKA-MONSTER」で、自分の声をまるで楽器のように使いこなす様子も圧巻だ。まさに“リズムの洪水”のような1枚。だからこそアルバムのラスト、デイヴィッド・T.ウォーカーのギターとサシでじっくり向き合う「dragonfly」の深さも心に染みる。
11th Album
monkey girl odyssey

2001年12月5日発表
UPCY-6904
Universal Music
吉田美和いわく本作は「ドリが歩きながら見ているものを表わすアルバム」。いろんなビートが交差し、疾走感が強調された前作に比べ、11枚目のアルバム『monkey girl odyssey』はどちらかと言うと内省的で、しっとりとメロウな仕上がりになっている。「flowers」など比較的アップテンポな楽曲も入っているが、作品全体を流れるグルーヴ感はゆったりめだ。題名に登場する“モンキーガール”は、ファンにはおなじみの人気キャラ。ドジで思い込みが強く、失恋ばかりしている女の子で、おそらく吉田自身の分身でもあるのだろう。その“大冒険”をアルバム1枚かけて描くのが本作のコンセプト。捻った遊び心がいかにもドリカムらしい。歌詩も身近なスケッチ風のものが多く、どこか連作短篇にも似た趣きがある(共通の主人公を思い浮かべてもいいし、曲ごとにそれぞれ違うモンキーガールを想像するのも楽しい!)。アルバムのトーンは落ち着いているが、各曲のディテールを見ると大胆な挑戦も多く行なわれている。例えば前出の「flowers」。ある1つのテーマをコード展開なしで繰り返し、そこに早口の歌詩を乗せていく手法はヒップホップのようだし、跳ねる系のリズムと情感たっぷりの歌が融合した「SNOW DANCE」も新鮮だ。アルバムの最後を締めるのは「カノン」。歌の主旋律とコーラスが輪唱状に重なり合って、どこまでも続くモンキーガールの旅路を優しく見守っている。
12th Album
DIAMOND15

2004年12月8日発表
UPCH-9215
DCTrecords/Universal Music
1997年にVirgin Records Americaと契約。国内の活動と並行で、米国のマーケットにも挑み続けてきたドリカム。そのチャレンジにひと段落をつけ、レーベルをユニバーサルミュージックに移籍して初めてリリースしたのが通算12枚目のこのアルバムだ。日本語によるオリジナル作品は、2001年の『monkey girl odyssey』から3年ぶりとなる。一聴して心に残るのはやはり、全編を漂う心地良い解放感だろう。ラテン調ビートが躍動する「OLÁ! VITÓRIA!」や、洗練されたミディアムポップス「マスカラまつげ」、さらには「ラヴレター」「やさしいキスをして」など切ないバラードまで──。伸びやかに歌いまくる吉田美和は、まるで水を得た魚のよう。何にも縛られずに自由に歌える喜びが、どの楽曲からもほとばしっている。要所でストリングスを多用し、ゴージャスさの中にも余裕を感じさせるサウンドも印象的だ。中村正人の発言を借りるならば、「アメリカでの悪戦苦闘を通じて心と身体の筋肉がタフになった」成果だ。例えばオープニングに続く2曲目「朝日の洗礼」は、1992年の大ヒット「決戦は金曜日」の続編とも言うべき十八番のディスコファンクだが、音色の滑らかさといいリズムのタイトさといい、2人のスキルがステップアップしているのは疑いない。まさに15周年にちなんだタイトルが示すように、15曲の収録ナンバーがどれも宝石のようにキラキラ輝いてる。
13th Album
THE LOVE ROCKS

2006年2月22日発表
UPCH-1473
DCTrecords/Universal Music
2005年2月、ドリカムはドラマ「救命病棟24時」第3シリーズの主題歌を手掛けた。彼らにとっては3度目のコラボだったが、物語のテーマが“震災時の医療現場”というシリアスなものだったこともあり、2人は「本当に大変な思いをしている人に、どんな言葉がかけられるんだろう」と悩み抜いたという。こうして生まれたのが、35枚目のシングル「何度でも」。そしてさらに1年後、この最重要ナンバーとカップリング曲「空を読む」とが核となって、13枚目のアルバムが完成する。それが本作『THE LOVE ROCKS』だ。「この愛であなたを、ロックする」というタイトルが象徴するように、全体を貫く色調はどこまでも力強くポジティヴ。1曲ごと目まぐるしくリズムが変わり、ドリカムの持つポップさを全方位的に追求したショーケースのような趣きがある。大人数のコーラスをバックにソウルフルな歌を聴かせる「PROUD OF YOU」、しっとりした王道のバラード「めまい」、70年代フィラデルフィアソウルを思わせる「JET!!!」、現代風のボサノバアレンジが印象的な「哀愁のGIジョー」、アッパーなレゲトン風味の「SUNSHINE」など、楽曲のバラエティも極めて豊富だ。と同時に、「何よりも吉田美和の歌詩をビビッドに伝えたい」というアレンジャー中村正人の信念が全曲に通底していて、アルバムとしてブレを感じさせない。キャリア史上、最もアグレッシヴな1枚。
14th Album
AND I LOVE YOU

2007年12月12日発表
UPCH-20063
DCTrecords/Universal Music
ドリカムにとって、さまざまな意味で激動の年となった2007年。8月から9月にかけて通算5回目となる“史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND”を挟みつつ、同年12月にリリースされたのが本作『AND I LOVE YOU』だ。14枚目となるこのアルバムはまた、吉田美和が大事な存在を失った悲しみの中で完成させた作品でもある。「もしも雪なら」「大阪LOVER」「きみにしか聞こえない」「ア・イ・シ・テ・ルのサイン ~ わたしたちの未来予想図 ~」などのヒットを多数収録しながらも、トータルではどこか静謐な印象を与えるのはそのためだろう。オープニングテーマ「a little prayer」から、ラストに置かれた珠玉の名曲「AND I LOVE YOU」まで、どの曲もパーソナルな悲しみと悼みに染め抜かれているようにすら思える。と同時に、それが個人の感情にとどまらず、愛する人に向けた普遍的なメッセージに昇華されているのがすばらしい。後半のクライマックスと言える「またね」も、そんな1曲。もともとは映画『ワンピース』の主題歌だが、もう会えない相手にあえて「またね」と声をかける歌い手の気持ちが切ない。マーチの明るいメロディと相まって、リスナーの胸を強く揺さぶる。吉田の歌にそっと寄り添うような中村正人のコーラスも感動的だ。まさにタイトルが表す通り、どこまでもシンプルで強いラヴソング集。
15th Album
DO YOU DREAMS COME TRUE?

2009年3月21日発表
UPCH-20146
DCTrecords/Universal Music
デビュー20周年の記念日にリリースされた、15枚目のアルバム。「ドリしてる?」というこれ以上ないほど直球のタイトルは大切なリスナーへの挨拶であり、同時に自分たちへの問いかけでもあるのだろう。清新で力強いサウンドからは、国民的バンドのポジションをあえてリセットし、まっさらな状態で再スタートを切りたいという強い気持ちが伝わってくる。祈りにも似たオープニングテーマ「a song for you」に続く2曲目「MERRY-LIFE-GOES-ROUND」は、その象徴と言ってもいい。どんなに悲しい出来事があっても、メリーゴーランドのように回っていくのが人生。夢や希望をなくしても、裸足になってまた歩いてみよう──。泣きたくなるほど懐かしい旋律にそんなメッセージを乗せたこの曲は、切なさを包み込んだ出発の歌であり、本アルバムの隠れた主題が“喪失と再生”であることを告げている。冷たい冬の朝を思わせる「連れてって 連れてって」や、18歳の吉田美和が書いた卒業ソング「GOOD BYE MY SCHOOL DAYS」などのシングル曲に加えて、突き刺すようなリズムの「TO THE BEAT, NOT TO THE BEAT」、官能的なラテンテイストが鮮烈な「あぁもう!!」など、新曲もみんなフレッシュかつパワフル。シンプルで美しい「a love song」を最後に置いて、もう一度アルバム冒頭へとつなげる円環構造も味わい深い。まさに20年目のファーストアルバム。
16th Album
LOVE CENTRAL

2010年11月30日発表
UPCH-20218
DCTrecords/Universal Music
曼荼羅にも似たアートワークが印象的な、16作目のオリジナルアルバム。“愛の巣窟”を意味するタイトルに相応しく、ダークな情念からピュアな想いまで、さまざまなエモーションが坩堝のように渦巻いている。デビュー以来ずっと〈恋から愛まで〉を歌ってきた彼らが自分たちの内面により深く踏み込んだ意欲作で、全ディスコグラフィ中でも一番コンセプチュアルな1枚と言えよう。全体を貫くのは、酸いも甘いもかみ分けたアダルトな匂い──もっと言うなら、背徳スレスレの艶やかさだ。鋭いビートに乗せ“罪の快楽”を告白する「LIES, LIES.」にしても、たゆたうギターに揺れる恋心を託した「ANOTHER JUNK IN MY TRUNK」にしても、本作の収録曲はどれも色っぽい。特に白眉と言えるのが、ジャジーな雰囲気満点の「POISON CENTRAL」。場末のアバズレ女を思わせる挑発的ヴォーカルとゴージャスなブラスサウンドが醸し出す“毒っけ”はまさにドリカムの新境地であり、現在ではライヴの最重要レパートリーになった。そして、このようなディープな楽曲が並ぶからこそ、珠玉のバラード「ねぇ」の切なさや、底抜けにポップな「生きてゆくのです♡」のメッセージもまたまっすぐ伝わってくるのだ。さらにもう1つ、大ヒット曲「その先へ」でFUZZY CONTROLとのコラボが本格始動している点も見逃せない。新生ドリカムの可能性を大きく拡張させた重要アルバム。
17th Album
ATTACK25

2014年8月20日発表
UMCK-9725
DCTrecords/
UNIVERSAL SIGMA
原点回帰と、さらなる挑戦。デビュー25周年に発表された本作は、相反する2つのベクトルが火花を散らす最高のポップアルバムだ。前作からのインターバルは約4年とバンド史上最長。収録時間も全17作で最も長い。構成もユニークで、前半には新録8曲、後半には「さぁ鐘を鳴らせ」「MY TIME TO SHINE」「AGAIN」などシングル8曲がまとめて収められている(初回盤はボーナストラック2曲収録)。まるでアナログLPを引っ繰り返すように真ん中で空気が変わり、好きな音楽をとことん追求するアグレッシヴな姿勢と、王道ヒットメーカーとしての貫禄が両方楽しめる仕掛けだ。特に印象的なのは、ほとんどやりたい放題と表現したくなる前半部のハジけっぷりだろう。オープニングに続き冒頭を飾る「ONE LAST DANCE, STILL IN A TRANCE」は、「決戦は金曜日」など初期の名曲を彷彿とさせる“ドリカム流ファンク”の最新版だし、疾走感あふれる「軌跡と奇跡」からゆったりしたバラード「FALL FALLS」へ続くパートでは、ヴォーカリスト吉田美和の表現力のレンジをまざまざと見せつけてくれる。「あなたにサラダ以外も」「MONKEY GIRL ー 懺鉄拳 ー(懺鉄拳の懺は懺悔の懺)」と人気レパートリーへのアンサーソングが入っているのも、昔からのファンにはうれしい贈り物。等身大のユーモアと高度なアレンジが渾然一体となったその完成度は、25年目の彼らが立っている地平をまさに象徴している。