まだまだ先の見通せない中で、それでも生の音楽を直接届けるべく、いつ何が起こっても対応できるライヴスタイルとして生み出された、バンド史上初となる斬新な編成〈ACOUSTIC風味ドリカム〉。
その総仕上げとして行われたライヴツアーが『DREAMS COME TRUE ACOUSTIC風味LIVE 総仕上げの夕べ 2021/2022 ~仕上がりがよろしいようで~』だ。
DREAMS COME TRUEの奥深き楽曲世界、そして吉田美和の歌と歌詩がこれ以上ないほど解像度高く堪能できるライヴを完全パッケージ!
2023年に予定されている4年に一度の『史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND』へと直結する重要な映像作品!

ライヴ本編以外にパッケージ限定の特典映像として、各公演での面白MCをまとめた約55分にわたるMCダイジェストや、普段はほぼ見せないDREAMS COME TRUEの貴重なリハーサルシーンや、ライヴ本番のバックステージを中村正人のインタビューと共に振り返るドキュメンタリー、本ツアーのリハーサルから全公演に密着した総収録時間540時間に及ぶ膨大かつ貴重な映像を厳選に厳選を重ね、約27分に凝縮されたものなど、過去に例を見ない貴重なドキュメンタリー映像を多数収録している。

MOVIE

  • DREAMS COME TRUE
    ACOUSTIC風味LIVE
    総仕上げの夕べ 2021/2022
    〜仕上がりがよろしいようで〜

OVERVIEW

  • Blu-ray(2枚組)

    ¥8,030 (税込) UMXK-1092/3
    64ページ豪華ライヴフォトブック付き(2大巨匠カメラマンであるMikio HASUI、大川直人撮影)

    DISC1:ライヴ本編
    映像:2層/1080 High Definition 23.98PsF/MPEG-4 AVC
    音声1:リニアPCM(96kHz/24bit)2ch/STEREO
    音声2:Dolby True HD(96kHz/24bit)5.1ch/サラウンド

    DISC2:特典映像
    1層/1080 High Definition 59.94i /リージョンコードALL/MPEG-4 AVC
    音声:リニアPCM(96kHz/24bit)2ch/STEREO

  • DVD(2枚組)

    ¥6,930 (税込) UMBK-1307/8
    64ページ豪華ライヴフォトブック付き(2大巨匠カメラマンであるMikio HASUI、大川直人撮影)

    DISC1:ライヴ本編
    映像:片面2層/16:9/LB/リージョンコードALL/MPEG-2
    音声1:リニアPCM(48kHz/16bit)2ch/STEREO
    音声2:ドルビーデジタル(48kHz/16bit)5.1ch/サラウンド

    DISC2:特典映像
    映像:片面2層/16:9/LB/リージョンコードALL/MPEG-2
    音声:リニアPCM(48kHz/16bit)2ch/STEREO

RECORDED MUSIC

DISC 1

01. 何度でも

02. いつのまに

03. スキスキスー♡

04. APPROACH

05. KUWABARA KUWABARA

06. どうぞよろしく

07. 星空が映る海

08. 空を読む

09. 琥珀の月

10. 高く上がれ!

11. ONE YESTERDAY - DCT MIX -

12. 夢で逢ってるから

13. やさしいキスをして

14. あなたとトゥラッタッタ♪

15. G

16. YES AND NO

17. さぁ鐘を鳴らせ

18. その先へ

19. 次のせ~の!で - ON THE GREEN HILL - DCT VERSION

20. サンキュ.

21. うれしい!たのしい!大好き! - DOSCO prime Version -

DISC 2

・各公演での面白MCをダイジェストにまとめた
「ACOUSTIC風味LIVE 中村正人 × 吉田美和 MC ダイジェストの総仕上げ」(約55 分)

・ツアーの裏側に迫ったドキュメンタリー
「ACOUSTIC風味LIVE 中村正人 × 吉田美和 540 時間の総仕上げ」(約27 分)

LINER NOTES

 例えば4年に一度開催されるグレイテストヒッツライヴ『史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND』やオリジナルアルバムのリリースに伴うコンセプチュアルなツアーが映像作品となる場合、そこに対する期待感というのは、映像表現ならではのクオリティであったり、あるいは追体験として楽しめるという側面が大きかったりするものと思われる。もちろん、今回リリースとなる映像作品『ACOUSTIC風味LIVE 総仕上げの夕べ 2021/2022 ~仕上がりがよろしいようで~』も、そうした作品性のクオリティは間違いなく一級品であると断言できる。しかし、この作品をどうしても所有しておきたいと思わせる切実な動機は他にもある。それは、記録としての重要性がいつも以上に高いものとなっているからだ。DREAMS COME TRUEがアリーナ公演をやる場合には通常あり得ない編成であるというレア度もさることながら、そこには2020年のある時から世界中の人々が同じような不自由を感じながら、それでも前を向いて暮らしてきた共通の記憶とでも呼ぶべきものが、彼らの奏でる音楽の中にしっかりと宿っているのだ。

 まずは、ライヴを中心に大まかではあるが、2020年4月以降からこのツアーが始まる2021年10月までのDREAMS COME TRUEの歩みを振り返りたい。
 2019年はデビュー30周年イヤーと『ドリカムワンダーランド』が重なるという奇跡的なアニバーサリーイヤーとなり、全国のファンとともに喜びを分かち合うことができた。そして『ドリカムワンダーランド』と並行して行なっていた『ドリカムディスコ』と呼ばれるパーティー形式の新イヴェントをより発展させた『ドリカムディスコ大感謝祭』が新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から延期、そして中止になったのが最初だった。続いて、その年の10月から12月にかけて予定していた『WINTER FANTASIA 2020 - DOSCO PRIME -』も4月半ば段階で中止を決断。しかし7月に入り、オンライン形式のイヴェントの開催を発表した。それが『WINTER FANTASIA 2020 - DOSCO prime ニコ生PARTY!!! -』で、当初予定していたツアー日程の土曜に生配信をするというものだった。合わせて、10月14日にアルバム『DOSCO prime』がリリースされた。
 特筆すべきは、ニコ生PARTY!!!の中で行われた<ACOUSTIC-MI LIVE SHOW at ブルーノート東京>だ。ヴォーカル&ベース、そしてアコースティックギター×2、ピアノ、シーケンスによるリズムトラックという初披露となった編成で、これが“アコースティック風味 LIVE”の原点となる。そして、本来なら裏ベストヒット・ライヴである『裏ドリワンダーランド』(通称ウラワン)が行われていたはずの2021年秋から2022年春にかけての日程を、まだまだ収束の気配が見えていなかったコロナ対策も兼ねて、いつ何が起こっても対応できるライヴ編成として発展的に仕上げていったのが今回のツアーだった。だから、「こっちが本業ではない」と中村正人も吉田美和も公言している通り、苦肉の策として彼らがギリギリ納得できる形が“アコースティック風味LIVE”だったというわけだ。ただ、こうした形を見出せたのは、ドリカムの2人が人と会うのも困難な時期でも、なんとか工夫してライヴという表現の場をあたため続けてきたからこそに他ならない。歩き続けなければ到達できなかった地点として刻まれているのがこのツアーなのだ。さらに言えば、オンラインを通じてファンと共に作り上げたものと言うことができる。だから、大切な記憶&記録が詰まった作品なのだ。

 それでは、今回のライヴにおけるポイントを見ていきたいと思う。
 まずは先ほども触れた編成だ。DREAMS COME TRUE(吉田美和・Vo/中村正人・Ba & BVo)、本間将人(Pf & Sax)、武藤良明(AGt)、JUON(AGt &BVo)、DJ MassMAD Izm*(DJ)、KEITA JOKO(Computer Programming)。最小にして、どんな曲にも柔軟に対応できる編成だ。特にドラムがいないことで、今回は曲の表現領域がいつものライヴとは顕著に異なるものとなっている。簡単に言えば、生音と打ち込み、それぞれの解釈が程よくミックスされたものとなっているのだ。そしてそれは、ドリカム楽曲がそもそもの出発点から宿しているDNAとも言うべき特徴に他ならない。オリジナルの楽曲の良さと最新のアレンジで表現された風通しのいいアンサンブルの中で際立つもの――それこそが吉田美和の歌唱と歌詩だ。
 実はそこが今回のライヴの最大の見どころにして聴きどころとなっている。そのことが特に実感できるのが、6曲目に披露した『どうぞよろしく』と10曲目の『高く上がれ!』ではないかと思う。『どうぞよろしく』は打ち込み主体のR&B楽曲で、今回の編成においてはオリジナルの持つ隙間がうまく表現されていた。だからこそ、特にサビにおけるエモーショナルなヴォーカルがグッと胸に迫るのだ。独白調で語られる“あなた”への愛の深さを表現するのに、太陽系の果てを目指して飛行し続ける「ヴォイジャー」と深度6500メートルまで潜ることのできる有人潜水艦「しんかい6500」という思いがけないスケールの大きい固有名詞を出すことで、どこまでも想像を掻き立てられる仕掛けになっている。そして『高く上がれ!』は独特のハネるリズムとしっとりとしたヴォーカルのギャップが楽しい楽曲だが、歌詩はもう文学作品と言っても過言ではない圧倒的な表現力だ。こんな一節に驚かされる。
〈どしゃ降りの空はあなたに わたしの手を取って走らせた
雨が下駄の音も消して 世界にふたりだけの気がした〉
 あえて〈どしゃ降りの空〉を主語にして、天気のせい、とすることで、初々しい男女の恋心が視覚的に伝わってくる。また、英語を翻訳したような文体になっているのも、サウンド面でのブラックミュージックのリズムと和製メロディとのマリアージュ的試みを示唆しているようで興味深い。
 ライヴ中に歌詩の細かなニュアンスを音楽と同時に感じるというのは、実は相当難易度の高いことだ。それはやはり音楽の情報量がどうしても多くなってしまうからだ。だからポップスにおいても韻を踏んだりすることで言葉をより音楽的にし、フィジカルに訴えかけるような作りが昨今では主流となっている。しかし吉田美和の書く歌詩は、あくまで言葉としての美しさを追求しつつ、さらにそれが音楽と合わさったときに情景が浮かぶという奇跡的なレベルに到達している。今回、このライヴを観ながら、改めてそのすごさに胸を撃ち抜かれた思いがした。

 もうひとつ、重要なポイントがある。それは、セットリストの構成だ。
 今回ほど、ストーリー性とメッセージ性が融合したものはなかったのではないかと思われる。しかもそれが、アルバムツアーのようなコンセプチュアルなものではないツアーで実現しているというのが注目に値する。核となっているものは、やはりこの2年間に他ならない。
1曲目『何度でも』、2曲目『いつのまに』。どうしてもここから始まらなければならなかったという強い意志が感じられる選曲だ。同じ時間を過ごしてきた全ての人たちに対して、同じように響くという確信が、むしろオーディエンス一人ひとりの表情に浮かんでいるようだった。あからさまなメッセージソングを歌うわけではないDREAMS COME TRUEだからこそ、今この2曲から始めることの意味を噛みしめられるような気がした。
 どことなく『ウラワン』的要素を含んだ――というのは筆者の都合の良い深読みかもしれないが、普段のライヴではなかなか、しかもフル尺で披露されないレアな曲たちが並んでいるというのも、この“アコースティック風味” 編成だからこそ。特に圧巻は、8曲目『空を読む』からの流れだった。9曲目『琥珀の月』、10曲目『高く上がれ!』、11曲目『ONE YESTERDAY - DCT MIX -』、12曲目『夢で逢ってるから』、13曲目『やさしいキスをして』の6曲は、もちろん制作時期も曲調もバラバラだ。しかし、これほどのレンジの広さと深さを持つ楽曲を一緒にしてドリカムというひとつの入れ物にしまってしまえる彼らの冒険心とタフさに感服した。『やさしいキスをして』は、MASADO and MIWASCOによるDOSCO primeヴァージョンの流れも感じさせつつ、本編最後のブロックへと突入していく。
『あなたとトゥラッタッタ♪』『G』『YES AND NO』は、まさに今のドリカムを代表する楽曲たちだ。特に『G』『YES AND NO』は、コロナ禍の端緒でリリース(2020年7月1日)された両A面シングルで、彼らのこの2年間を牽引してきた楽曲と言える。雄弁なベースラインと核心をつく歌詩のヴォーカルが螺旋状に絡んでいく『YES AND NO』、2ステップ的なリズムと流麗なメロディが不思議な浮遊感を生み出している『G』は、とりわけ彼らの中でもチャレンジングな楽曲であり、それをこのタイミングでリリースしたというところに何より彼ららしさがある。ディスコティークを彷彿とさせる『G』の照明演出とカメラワークは見どころのひとつだ。
『さぁ鐘を鳴らせ』『その先へ』の2曲が本編最後の曲になるのだが、これはオープニングの『何度でも』『いつのまに』に対応しているものだと想像する。ここで力強いメッセージをもう一度示すことで、アンコール1曲目『次のせ~の!で - ON THE GREEN HILL - DCT VERSION』が描く“未来”への希望を指し示すことができるからだ。これまでと今、そして、これからを見事に表現しきったセットリストだった。

 2023年には、4年に一度のグレイテストヒッツライヴ『史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2023』を控えている。ここからいよいよ次へと歩き始める、その前の重要な一歩目として、この『ACOUSTIC風味LIVE 総仕上げの夕べ 2021/2022 ~仕上がりがよろしいようで~』の映像作品は我々の記憶に刻まれ続ける。みんなここにいるんだよ、という存在証明のような作品だ。

Text●谷岡正浩

TOUR SITE