「ドリカム30周年前夜祭」と銘打って、昨年11月から12月のあいだに全国5都市で開催されたライヴの模様を収録した映像作品がリリースされることとなった。
このライヴ、もちろんクオリティは言わずもがなで最高品質保証付きなのだが、内容がかなりレアなものとなっている。そこには、イベントというお祭り感と、そもそもの成り立ちが大きく関わっている。
まず、ENEOSとドリカムの共催という形は、通常の協賛企業とアーティストというビジネス的な枠組みを大きく超え、良いライヴを届けたい!というマインドの面でのハモリ具合がそこかしこから感じられる。
それをもっともわかりやすくビジュアライズしたのが、ステージ正面のLEDビジョンを抱きかかえるように持つENEOSのキャラクター・エネゴリくんと、彼を両脇から支えるドリクマ&ワルクマのドリカム公式キャラクターたちの並びだ。
演出面において、彼らが果たした役割はとても大きい。
そして何より、通常のアルバム・リリースに伴うツアーではないため、セットリストがかなりフレキシブルに構成されているという点がこのライヴにおける最大のお楽しみだ。
たとえば、「ひさしぶりのI Miss You」「STILL」といった初期楽曲を披露したり、頭の3、4曲目に「SUNSHINE」「サ
ヨナラ59ers!」といった、深い音楽性を内包した攻めの楽曲を持ってくるあたりに、いつもと違うドリを感じる。
そういったレア楽曲とヒットシングル、最新曲を自在に組み合わせたセットリストに、なおかつ今回はMCがかなり多めに収録されているのもポイントだ。そんな中でも30周年を意識した、活動初期に関わるトークもレア度に拍車をかけている。
3月21日でデビュー30周年を迎えたDREAMS COME TRUE。今年はさらに4年に一度の「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019」が開催されるスペシャルイヤーとなっている。
文字通り、そこに向けた前夜祭ということで、このライヴには、ワンダーランドに向けた予行演習という側面も含まれているのだ。これは、ライヴ中の吉田美和のMCで判明するのだが、先にネタバレしてしまうと、
通常ワンダーランドではファンからのリクエストを事前に募集し、その結果に基づいてセットリストを組むのだが、今回は30周年ということもあって、
リクエストは行わず、ドリカムの2人が30年分の感謝を込めてファンに聴いてもらいたい楽曲を届けたいということに、どうやらなるようだ。
そしてこのライヴはそうした意志の試行錯誤を表した貴重な機会として、アーティストやスタッフにとっても、そしてファンにとってもまたとない機会となった。
ということはつまり、7月14日(日)から始まる「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019」の最高にして最良の手引きが、
こちらの映像作品というわけだ。たぶん、後々振り返って、資料的な見地からもかなり重要なものとなるであろう当作品、いろんな意味で見逃せない!のである。
TEXT by 谷岡正浩