ヴォーカルレコーディング中の。
吉田美和の写真は絶対に撮ってはならぬ。
そのことを理解するには「鶴の恩返し」を思
い出すが良い。
吉田美和の正体が鶴だというわけではない。
吉田美和が、実は自分の羽毛を抜いて糸の間
に織り込み、美しい布を作っているのでもな
い。
ましてや、写真を撮ることによって彼女の正
体がバレて、空へ帰っていかなければならな
いということでもない。
しかし、レコーディング中の吉田美和の写真
を決して撮ってはいけないということは、限
りなくこのニュアンスに近いものがある。
歌入れに全精力と全魂を込める吉田美和の姿
は、ひとさまに見せるものではない。
そうして造り上げた作品を、発表後聞いて下
さることがその全てを目撃することになるの
じゃ。
吉田美和がスタジオで唄っているときは、決
して、扉を開けてはならぬ。