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真夏の真実

「OK! 今日はココまでにしよう!吉田ちゃん、なかなかイケイケでグーだったよ。

グレートな歌、レックできたんじゃなーい。」



「明日も、シ ク ヨ ロ !」

「数々のヒット曲を世の中に送り込んで来た」と、自負するのに余念のない、自称 敏腕プロデューサー ナカムラの顔に笑顔が戻った。

吉田は、いつも、レコーディングで全身全霊を傾けるため、終了後は立っていられないくらい疲労する。そんな彼女を労おうと、



「いやー、お疲れ、お疲れ!」

と言いながら、ボーカルブースの扉を開けると、



「ありゃーーーーーーーーー。」

もうそこには、吉田の姿は無かった。

★★★

「美和さん、もう、お帰りになりましたよー。なんてったって、今夜は、ブラジル対フランス ですからー。ほほほほほほほ。」

最近、特に、彼女の笑い方が癇に障るようになってきた、自称 敏腕プロデューサー ナカムラは、軽い「めまい」(「めまい」といえば、
ドリカムのNEW ALBUM 「THE LOVE ROCKS」やや絶賛発売中!)とともに、夕べの出来事を思い出していた。



「Mステ!Mステ!夏うた!夏うた!るるるんるん!」



軽くスキップをしながらテレビのスイッチを入れた彼は、ことのほか上機嫌だった。
 

「ドリカム、何曲、入ってるかなー。るるるんるん!」


機嫌が良いのは単純な理由からだった。

激しく心配していた、ツアーと同時進行の、WOWOWライヴ音源制作も、例の「2曲以上の」レコーディングも、幸いにも順調だからだ。

「キターーーー!『真夏の果実』サザン、あったりまえー!サザンの無い夏なんてー、ありえねーーー。桑田先輩、頑張ってるなー。『花火』
aikoちゃん、あったりまえー!この曲、グッとくるよねー。『あー夏休み』あったりまえー。夏の永遠のマストアイテム!」




しかし、

カウントダウンが終わった時、彼の顔から笑顔が完全にフェードアウトしていった。

「ド リ カ ム ガ イッキョク モ ハイッテ ナイ 。

ドボジデダーーーーーーーー!」

彼は自問し続けた。

『夏』が思いっきり入ったタイトルの『あの夏の花火』は、

どうしたんだ!?

モロ、夏の日付がタイトルの『7月7日、晴れ』は、

どうなったんだ!?

そして、冗談半分、本気半分で、『サザンにチャレンジ!究極の夏シングルでーす。』なんて、一生懸命プロモーションした、『オラ!ヴィトーリア!』(高中正義氏によるご機嫌なノリノリ・インストヴァージョン付き)と『HOLIDAY ~much more than perfect!~』(デビット・スピノザ氏による最高のヒーリング・インストヴァージョン付き)の二曲は、

どないした〜〜〜〜ん!

彼は、目の前で、「敏腕 プロデューサー」の「敏腕」の字が、修正液で塗りつぶされて行くのを、見た様な気が、した。

「オ レ ガ 、 アマカッタ。

ナ ン ト イ ウ 、ウヌボレヤロー ダ。

いや、これで挫けてはいけない。

逆境でこそ、おれの真価が問われるのだ。」




そして、彼は涙でグショイグショになった顔を上げて、こう言い放った。

「こうなったら、オレの唯一のヒット曲、『LOVE LOVE LOVE』にあやかって、来年の夏シングルは、

『NATU NATU NATU』に決定だ!」

「ナカムラは〜ん、も〜 え〜わ。しっつれ〜 しましたっ!」


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