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MASA BLOG

『YES AND NO / G』ライナーノーツ

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「やっぱり、ドリカムだよね!」という言葉が本作を聴いて、思わず、まろび出た。
昨年30周年のメモリアル・イヤーを迎え、2020 年というはじまりの年に
DREAMS COME TRUEが放つ両A面シングル「YES AND NO / G」。
ポップ・シーンの最前線で、日本人のソウルと人生に寄り添う「クラシック」を作り続けてきた
ポップ・バンドが新たに生み出したこの2曲は、かれらが常にラディカルかつ貪欲に
自らを更新し続けることで、異端にして最先端のサウンドを「普遍」に変えてきたことの
証明にもなっている。
フジテレビ系列で放送される石原さとみ主演のドラマ『アンサング・シンデレラ』の
主題歌として書き下された「YES AND NO」は、時代を撃ち抜く実に鋭利な一曲だ。
80年代を思い起こさせるシンセ・ポップを下敷きにモダンなプロダクションを
施したトラックの上でソウルフルな歌声がグルーヴする疾走感のあるサウンドは、
かの時代をリアルタイムで生きてきたドリカムだからこその説得力がある。
昨今「80年代リバイバル」というキーワードは日本に限らず世界のカルチャーを
語る上でのトレンドだが、温故知新とはまさにこのことで「これを今やるなら、こうでしょ!」と、
クラシックで最先端なサウンドをリアリティを持って立ち上げることのできる存在は、
今、DREAMS COME TRUE以外にいないだろう。

そもそも「YES AND NO」というこのシンプルにして、引っかかりを残す
タイトルからして凄まじい。
〈YES AND NO 単純に勝ち負けじゃない / この世界で何が出来るの?〉と、
楽曲の歌詩にもあるように、様々な情報が横溢し既存の価値判断の基準が次々と
崩壊していく現代においては、誰かに与えられた「YES」か「NO」かを追い求めることに
意味はないのだということを聴く人に気づかせる。
自分が何を信じて行動していくのかが、すなわち今という時代を生きていくことであり、
その選択ひとつひとつがやがて自分なりの「YES OR NO」を手にすることへとつながっていく
絶望に満ちたこの時代のリアリティをしっかりと捉えながら、おべんちゃらじゃない
真っ直ぐな希望で未来を照らしだそうとするこの楽曲の歌詩は胸に突き刺さって離れない。

劇場版『Gのレコンギスタ』のテーマソングとして書き下ろされ、本シングルに先駆けて
ダウンロード配信されていた「G」は、『機動戦士ガンダム』という日本を代表する
アニメーション作品が時代ごとに投げかけてきた「問い」をさらに深め、新しい世代へと
受け渡す大いなる力を持った楽曲だ。
フュージョンやファンクのエッセンスの詰まった技巧的なイントロから始まり、
煌びやかなピアノとレトロ・フューチャリスティックなシンセサイザーのサウンドが、
かつて夢見た未来の宇宙像を戯画的に描き出す。
吉田美和と中村正人という日本のポップスにおける最強のコンビが楽曲を作れば、
それが名曲になってしまうのは考えてみれば至極当たり前のことなのだが、
このクラシックでエヴァーグリーンな響きを持ったサウンドは、
新たな時代の幕開けを告げる号砲のようだ。

『Gのレコンギスタ』の総監督である富野由悠季は、音楽ナタリーにおける中村正人との対談の中で
「もう少し物事を“普通に考える”ための言葉を持たなきゃいけないんじゃないのか」というのが
映画の「本当のテーマ」であると語っている。
そう、まさにこの監督の言葉と響きあうように、本シングルに収録された2曲は
我々がこの混沌とした時代を生き抜いていく上で本当に必要なこと、
「考え、悩みながらも、自ら未来を掴み取っていく」ことの大切さを歌っている。
イギリスの戯曲家・シェイクスピアは戯曲『ハムレット』に、
”To be, or not to be, that is the question
(このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ)”と、書いた。
そう、かつてシェイクスピアもそうしたように涙を流し、恐れに震えながらも、自らにとっての
「YES」と「NO」は何かを探し続けること、それこそが今を生きるということそのものなのだ、と、
DREAMS COME TRUEは知っている。
時代を鋭利に切り取り、人々の人生に寄り添う「歌」を紡いでいくこと、
それこそが自分たちの「Gear(武器)」
どう考えたって、いま聴くべきはやっぱりドリカムなんです!

TEXT by 小田部仁

小田部 仁(おたべ・じん)
1989年11月20日生まれ。東京都豊島区出身。
上智大学文学部英文学科卒。2013年、太田出版に入社。
ユースカルチャー誌『Quick Japan』編集部に配属。2015年、退社。
現在はフリーランスで雑誌やウェブを中心に国内外の音楽やカルチャーの分野をメインに
文筆・編集業に携わるほか、翻訳や通訳なども手掛ける。
DREAMS COME TRUEの永遠のマイ・フェイヴァリットは「SWEET REVENGE」。

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