毛の生えた矢印
彼の濡れた黒い鼻から、ため息ばかりが、出て来る。
大きく息を吸って、勢いよくため息をつく。まるで僕に当てつけてるみたいだ。
いや、ちょっと待てよ。彼としては、僕の面倒を見るのがイヤなのかもしれない。
それどころか、「コイツ」が僕に預けられたのではなく、彼が僕を面倒見に来てやったと思っているのかもしれない。
彼は、チョウチョのような耳を5ミリほど動かしたが、やっぱり振り向いてはくれなかった。
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われらがジョシュ/sumileに新たな展開有り。編集長藤井さんとその仲間達が「手作り」しているスッテキなマガジン、「東京カレンダー」をチェキラッチョ!
そして、「東京カレンダー」5周年、おめでとう!!!
これからもお互い「手づくり DE 手渡し」頑張ろう!!!
大きく息を吸って、勢いよくため息をつく。まるで僕に当てつけてるみたいだ。
★ ★ ★
今朝、彼の「母さん」は、彼の水飲みと、その下に敷くタオルと、リーシュと、ウンチを入れるビニール袋と、チキンジャーキーを持って、僕のアパートに彼を預けに来た。
彼の「母さん」は、どんなことをしても彼を一緒に連れてゆく。以前、ドリブログにも書いた事があるが、遠い南の島のスタジオまで連れて行ったこともある。ひょっとしたら僕よりも色んな世界を見ているかもしれない。噂によると、バミューダトライアングルにも行った事があるそうだ。
だから「コイツ」は、納得がいかない。
『ナンデ ボク ガ、ヒトリ デ、アンクル『なか』ト ルスバン ナンダ。』
いや、ちょっと待てよ。彼としては、僕の面倒を見るのがイヤなのかもしれない。
それどころか、「コイツ」が僕に預けられたのではなく、彼が僕を面倒見に来てやったと思っているのかもしれない。
この気まずい雰囲気をなんとかしなくちゃ。
ちょっと彼のご機嫌を取ろうと、部屋の中を走り回ってみたりして、その時はその時で結構盛り上がるのだか、やっぱり、それだけ。
たちまち、もとの、めっちゃ不機嫌な態度に戻ってしまう。
それどころか、後半は、「母さん」が帰ってくるであろう方向を向いたまま、1ミリも動かなくなってしまった。まさに、「毛の生えた矢印」である。
たぶん、「忠犬ハチ公」も、同じ様に飼い主をひたすら待ち続けていたのだろう。
それなのに「コイツ」は、「忠犬」どころか、「頑固者」と取られがちな事実に、ちょっと僕の心は痛んでしまった。
僕は出来るだけ優しい声で、話し掛けた。
「もうすぐ『母さん』、帰って来るから。」
彼は、チョウチョのような耳を5ミリほど動かしたが、やっぱり振り向いてはくれなかった。
『モー マッタク ドウジョウ ナンテ シチャッテ。
ボク ハ タダ、オナカ ガ スイテル ダケ。』
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